メビウス

(illust.綴なごみ)


駅のホーム自販機のキズ

立ち篭める疲労の空気

生きている全ての時間が

死んでいないとは限らない


夢とか目標のこと

嫌いなわけじゃない

私はただ目の前の

世界に必死なだけ

街の一部なだけ


生きることは素晴らしい

それを知らない私じゃない

ならば死なないことだって

教えてメビウス

終点のない電車のこと

3日後の私のこと


空になったジュースの缶に

もう一度注がれるオレンジ

飲み干しても倒しても

二度と消えない 美味しい時間

好きだったはずの時間


消えることは恐ろしい

それを知らない私じゃない

ならば生きたままでいい

教えてメビウス

自分の墓に花を手向ける朝のこと

3日前の私のこと


結び忘れた靴紐が

背中を押す

残基の減らないゲームほど

つまらないものはないと


思い出そう

今日が美しいのは

明日が来なくなる

そのときがあるからと


生きることは素晴らしい

それを知らない私じゃない

だけど消えることだって

恐ろしく、美しいことと

教えてメビウス

どこかにある終点のこと

いつ終わるか分からない

今日の私のこと


駅のホーム自販機のキズ

立ち篭める疲労の空気

空き缶を捨てるひととき

お腹がすいている私

インゲン

1996年生まれ。作詞家を志してからというもの、架空の歌詞を書いています。

歌のない歌詞