ねえ、テセウス
背筋の凍る奈落からやってきました
遥か底で幸せだねと笑っていました
ダークな音楽だけが理解者
骨を伝って黒い煙は身体の中へ
懐かしい
ねえ、テセウス
私は今も私
脱ぎ捨てた脆い皮を
抱きしめている
ねえ、あの日も
ほんとうは強い人で
誰も気づかない場所
眠っていたの
振り返れば一瞬
でも確かに
鍋の底は
焦げ付いている
ずいぶんと明るい場所へとやってきました
たまには許せないことに怒ったりしますが
見るも無惨な深かった痣は
肌に埋もれ寂しげに消えようとしている
さよならね
ねえ、テセウス
私は今も私
形もないあの夜を
ただ知っている
ねえ、今でも
変わらない強い人で
遊び疲れた頃に
眠りにつく
振り返れば平坦
でも確かに
鍋の底は
焦げ付いている
キー、トン
ギリギリ、トン
作り変わる私
死ぬその日まで
キー、トン
ギリギリ、トン
同じ子守唄を
いつまでも
覚えている
ねえ、テセウス
明日もきっと私
幸せな今日を
奈落と呼ぶときまで
ねえ、このまま
いつでも強い人で
遊ぶように舞うように
歩いていく
キー、トン
ギリギリ、トン
キー、トン
ギリギリ、トン……
0コメント