小春
胸が騒ぐ夏の朝と
街が光る冬の夜の
間にふと浮かぶ今日に
繋いだ指ひしめく
その風に触れたとき
終わりの匂いがした
最期の時を初めて描いた
しわがれたあなたの姿で
いつか貰った
キキョウの鉢植
水をやる朝
空がいつも
眩しかったことを知る
きっともう戻れないな
あなたを知る前の日々には
満ち足りたグラスを
溢れさせるように
飛び込んだ光
序章の終わりの
ページを折る
雨に打たれ這った道と
夢で飛んだ青い空を
繋いだ果てしない階段の
最初の段をここで
横顔を覗いたら
少しの衒いもなく
勇気を灯すひとつの命
まだ若いあなたの姿で
小さく丸まって
眠った私の
傷跡を見て
何を思う
二人だけの言葉で
私でなくなるような
ゆるい恐怖すら愛しくて
光の当たる場所
無邪気なままで
手を引いたあなた
今、私さなぎの
背中を破る
きっともう戻れないな
あなたを知る前の日々には
満ち足りたグラスを
溢れさせるように
飛び込んだ光
序章の終わりの
ページを折る
今、私さなぎの
背中を破る
涼しい午後
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