片道

思えばどれも

戻れぬ道だった

温もりを置き去りに

旅をした

焦げ付く思い出

今も美しく

選ばなかった夢は

より遠く


そしてまたもう一枚

握らされた片道のチケット

行先の書いていない

真新しいそれが

汗でふやける頃

もう何度目か、胸に問う

君はどうしたい?


いるはずのない

優しい母の声

自分の名前を呼んだ気がした

振り返る道には

アスファルトだけ

「ありがとう」と唱 え

また進みだす


そしてまたもう一枚

握らされた片道のチケット

こんな自分のままじゃだめと

呟いたきり深い眠りの中

優しい夢を見るのでしょう

どうか幸あれ


今日限りの景色より

わかりもしない未来が見たい

なんと愚かで堅実だろう

僕たちは


あの日歌った歌

ともに見た夕日

夕飯のひとさじ

もしも叶うなら

あの優しい日々を

もう一度


聞こえているかい

あの日の僕

握らされた片道のチケット

不安そうな目

優しい君なら

どこでも大丈夫

だから、最後に聞かせて

君はどうしたい?


ほんとうはいつも

幸せは君のすぐそばに

インゲン

1996年生まれ。作詞家を志してからというもの、架空の歌詞を書いています。

歌のない歌詞