エンドロール

犬を連れた老人が

幸せそうに微笑んだ

遠くから響くのは

はしゃぐ子どもの声


一体いくつの愛が

この街を作ったのだろう

流れていくこの風は

温かくて澄んでいる


重い影を引き摺って

ここまで辿り着いたんだ

これはゴールじゃない

わかっているよ

けれどあまりに美しいから

暗い旅路の終わりに見える

ひとつを区切る

エンドロールが

ゆっくりと流れてた


懐かしい話し声が

電話越しに聞こえた

傷がゆっくりと

癒えていく温度で


知らない路地裏に

残った家族の匂い

笑顔の幻が

まぶたの裏に残った


終わらないと思っていた

悲しみが終わると知った


今日は眠りたい

疲れてるんだ

こんなにもおだやかな夜がある

それを知った小さな体

優しい夢の

エンドロールが

ゆっくりと流れてた


味の薄い晩御飯には

優しさが溶けきっていた

きっと明日も同じように

穏やかな朝が来るのでしょう


これはゴールじゃない

わかっているよ

けれどあまりに美しいから

暗い旅路の終わりに見える

ひとつを区切る

エンドロールが

ゆっくりと流れてた


ここはゴールじゃない

わかっているよ

インゲン

1996年生まれ。作詞家を志してからというもの、架空の歌詞を書いています。

歌のない歌詞