龍の瞳

網戸の向こう

絵のような青

まぶたに焼き付く

積乱雲


冷やし中華の

玉子が甘い

テレビも点けない

昼下がり


蝉誘う街路樹の向こう

君が待ってる

杜撰な身支度

踵を詰め込むボロ靴

ドアを飛び出し

アスファルトへ


今日は遠くで

祭りだそうだ

行こうか迷って

過ぎる夜


汗も拭かずに

握るゲーム機

開いたままの

ノートと解けないひっ算と


退屈な八時ごろ響く

スイカ切る音

踊る心臓

寝苦しい薄布団から

足をはみ出し

野望を謀り


大人になっても

忘れずにいよう

夢に出てきた

龍の瞳を


目が覚める

背中を掻く

なんの夢を見たっけ

網戸の向こう

絵みたいな青

まぶたに焼き付く

積乱雲